2017年9月7日木曜日

Yoga for the Special Childトレーニングプログラムのご紹介

このブログは、基本的には患者さん向けに書いているのですが、時折知り合いの精神科医やセラピストや高校の同級生(笑)などが「みてるよー」と言ってくれるので、たまにはプロフェッショナル向けにも書いてみます。

Yoga for the Special Childのトレーニングプログラムを紹介します。

「特別なお子さんとヨガをしたい!」「ヨガを通してお子さんと関わりたい!」と思われる方のためのトレーニングです。ヨガの講師、医療関係者、セラピスト、またヨガの経験はなくてもお子さんと接することのある方(親御さん、保育士さん、学校の先生)、特別なお子さんのためのヨガを学びたい方を対象としています。とのことです。

主催者のお一人である、大滝涼子先生は、トラウマ診療の世界ではその名を知らぬものがいない先生でもあります。かくいうわたしも、PTSDの認知行動療法(PE)の訓練を積む過程で幸運にも顔を覚えていただく機会に恵まれたのでした。

大滝先生は和らかく、不思議な雰囲気をお持ちです。もともとのお人柄というのが大きいとは思うのですが、様々なバックグラウンドをお持ちというのも関係しているのではないかと思います。いつぞやのブログにも書きましたが、自分の専門分野以外にも、さまざまな学びと経験を広げていきたいと考えています。それが、結局のところは、自分の臨床の質の向上につながると考えているからです。

ご関心のある方、どうぞお問い合わせください。
ウェブサイトはこちらこちらです。


2017年8月20日日曜日

cocco - Sweet Berry Kiss

今晩は、沖縄出身の歌手、coccoさんのSweet Berry Kissを紹介します。
私は彼女のキャリアの中でも、根岸孝旨さんがプロデュースを担当していた時期が一番好きです。痛みを伴いつつも瑞々しい歌はもちろん、サウンドと録音のクオリティが驚くほど高いのです。良い意味でお金がかかっていて、商業ベースに乗った日本のロック音楽としての、ひとつの到達点なのではないかと思います。

さて、そんな彼女の名曲群の中で、私の一番のお気に入りはこの曲です。なんらかの事情があるのでしょう、曲の語り手は、今は両親との繋がりを失ってしまっているようです。あまり関係も良くなかったような印象も受けます。

全体を通して喪失感に包まれてはいるのですが、曲の最後では、わずかながら差し込む一筋の希望の光を、歌い手はしっかりと捉まえているように思えます。それが、この歌を特別なものにしていると感じます。

------------------------------------------
I'll let you go along the shining blue sky 
I'll let you go along don't look back

But I awoke from a dream 
I call for you over and over again

Blackberries make Daddy smile 
Raspberries make Mommy smile 
Sweet berries make me cry oh cry

I lost my name who am I 
I lost my home where am I 
But I can fly high fly high so far 
So far away

真っ青な空へ飛んでいって
行かせてあげるよ 振り返らないで

だけど、夢から覚めたら
あなたの名前をなんどもなんども呼んでいる

ブラックベリーで父さんは笑顔になるし
ラズベリーで母さんは微笑む
スウィートベリーで私は涙を流す

名前をなくしてしまった 私は誰?
帰るところをなくしてしまった 私はどこ?
だけど 私は高く飛ぶことができる
遠くまで そう 遠くまで
------------------------------------------

それでは、また。


2017年8月13日日曜日

心理療法の流派について

心理療法とひとくちに言っても、様々な流派があります。
精神分析、認知行動療法、対人関係療法、来談者中心療法、EMDR、などなど...。

私はそのなかのひとつ、認知行動療法を専門としているのですが、実は認知行動療法の中にも様々な学派・流派があり、もう何がなんやら...という感じになっているんですね。

そんな中で、私が最近お気に入りの精神療法家は、John C. Markowitzという精神科医です。彼が専門とするのは対人関係療法という心理療法なのですが、認知行動療法の訓練・実施・指導経験もあるようで、だからなのでしょう、非常に柔軟な思考を持っておられるようです。そして、彼の著書を拝読すると、患者さんの利益を第一に考えていることが、文面のあちらこちらからにじみ出ているんですね。ちょっと紹介してみますね。(わかりやすくするために、やや意訳します)

Interpersonal Psychotherapy for Posttraumatic Stress Disorder(2016)より
「あるカンファレンスで、『認知行動療法をディスる野郎』と紹介されたことがある。私はそんなことは全く思っていない。私は認知行動療法の訓練・治療・指導も行なってきているのだ。認知行動療法が効果的であることはわかっている。ただ、認知行動療法が患者さんを治療する唯一の手段ではないと思っているだけだ。」
「心理療法の歴史は、流派間の多くの争いで彩られてきた。だけど、患者さんたちが、最良の治療を受けられるように、心理療法家たちで協力して取り組んでいくべきだと私は思う。」

Interpersonal Psychotherapy for Dysthymic Disorder(1998)より
「心理療法家が、全ての患者を『プロクルステスのカウチ』に乗せて、単一の治療法を当てはめる時代は過ぎ去ったと私は信じている。全ての患者に全く同じ薬を処方する薬物療法家なんて、いないようにね。」

私が主軸とする心理療法は、これからも認知行動療法ですが、認知行動療法の治療効果を増すためにも、幅広い視点が必要と考えています。例えば、複雑性悲嘆をお持ちの方に対して、私は「Complicated Grief Treatment」を行うことがありますが、この治療法は、認知行動療法と、対人関係療法と、動機づけ面接のハイブリッドなのです。認知行動療法のことだけ考えて、訓練を続けるわけにはいかないということですね。

目の前の患者さんに対し、最適な治療は何か。常に自問自答し、訓練を重ねていきたいと考えています。

それでは、また。



2017年7月28日金曜日

Fountains Of Wayne - Troubled Times

世の中で一番ポップな曲をかけてください、と言われたら、私がかけるのはこの曲です。このアルバムの日本盤に書かれてあった宣伝文句は次のようなものでした。

「このアルバムが嫌いになれる人なんて、たぶん心が石でできているに違いない」

私はこういう言い回しを、基本的には好まないのですが、なかなかの売り口上ですね。

私の心は、どうやら石ではできていないようです、たぶん。




2017年7月2日日曜日

開院二周年を迎えました

おかげさまで、昨日で開院二周年を迎えました。

写真は、仲良しの心理士さんがプレゼントしてくれた「御器所こころのクリニック二周年記念特別タオル」です。今治製です!!サプライズでいただいたのですが、たいへんうれしかったです。

私を支えてくださった皆様に、そして何よりも、ご来院いただいた皆様に御礼を申し上げます。今後とも、どうぞ宜しくお願いいたします。

2017年4月28日金曜日

ハンバート ハンバート  まぶしい人

「すごい、どろどろした嫉妬心があるんです。そんな自分が嫌になります。これ、どうしたらいいんでしょうか?」

私が精神科医にになってから、ときどきいただく相談のひとつです。
私は新聞の人生相談担当の作家ではありませんから、気の利いた答えを返すことはできません。

これまで、答えのない疑問につきあたったときに私がしてきたことといえば、優れた音楽を聞いたり、小説を読んだりして、ただただ考えるということですかね。

上にあげた相談について考えていると、最近よく頭に浮かぶうたが、ハンバートハンバートの、まぶしい人、といううたです。

----------------------------------------------------------------------------------
君の悪口でさんざん笑って 家に帰ってひとり落ちこむ
人を押しのけてでも前に行く その強さが僕にもあったなら

君と友だちになる夢を見た 夢の中ではうまくやれてた
口に出さなくても思いはとどく 今度こそはうまくいく気がする
----------------------------------------------------------------------------------

なんとあたたかく、なんと情けないうたでしょうか。
このブログを書くにあたって、改めて聞いてみました。
上記の相談に対するこたえは何一つ浮かびませんでした。
けれど、まあ明日も生きていこう、という気にはなりました。

それでは、また。




2017年4月10日月曜日

こころの検査について

例えば高血圧の方が、降圧薬を飲みはじめたとします。その薬が効いているのかどうかは、血圧の推移をみればわかりますよね。また、糖尿病なら血液検査をして、血糖値やHbA1cの推移をみれば良いわけです。じゃあ精神科はどうなのでしょうか?

もちろん、精神科にも症状の程度を表す尺度が、精神障害ごとに存在します。例えば、うつ病ならHAM-D、BDI-II、QIDS、パニック障害ならPDSS、社交不安障害ならL-SASといった具合です。

当院では、こういった客観的な尺度を、治療の要所要所で計測し、現在の状態や治療の効果を皆様に説明することをこころがけています。とくに、認知行動療法を行う方については、こういった客観的な尺度の測定は、ほぼ全例で行なっています。(より正確に申し上げると、認知行動療法が認知行動療法であるためには、何らかの方法を用いて症状を客観的に測定することは、必須の手続きです。)

まあでも、これって当たり前のことですよね。血圧を一切はかることなしに高血圧の治療をされたらどう思いますか?採血して血糖値を測ること一切なしに糖尿病の薬を渡されたらどう思いますか?どうしても特別視されがちな精神科領域の治療ですが、このあたりは他の科と違いはないのです。(そして、たぶん、高血圧の人の血圧の数値が「単に下がる」ことよりも、たとえばパニック障害の人のPDSSの数値が「単に下がる」ことの方が、価値のあることなのです。この辺りのことについては、別の機会に説明できれば、と思います。)

これまでも、これからも、当たり前のことを、当たり前に行う精神科・心療内科クリニックであり続けたいと考えています。

2017年4月8日土曜日

あなたのアンセムはなんでしょうか?

アンセムとは...(wikipediaより)
元々は聖公会の教会音楽の一種。 聖歌、交唱賛美歌。 特定の集団のシンボルとしての賛歌、祝いの歌、祝曲。「 国歌(national anthem)」、「応援歌(sports anthem, stadium anthem, arena anthem)」など。

多くの人にとって、アンセムと言える曲があると思います。阪神ファンであれば「六甲おろし」、中日ファンであれば「燃えよドラゴンズ」、某有名私大出身の方であれば「都の西北」などなど...

私のアンセムといえば、90年代に圧倒的な人気を博した英国のロックバンド、OasisのDon't Look Back In Angerに尽きるかなと思います。この曲にはたくさんの思い出があるのです。いろんなところで、いろんな人と、何度大合唱したことか。とにもかくにも有名曲なので、いまだにテレビなどで流れてくるのですが、この曲を耳にするたびに、青春時代のアホウな自分が思い出されて、どこか遠くに出奔したくなります...。

私がそのアホウな青春時代を送った90年代は、本当の意味でのロックスターが存在した最後の年代だったんじゃないかと思います。Oasisは、その中の最後の打ち上げ花火のひとつでした。

あらためて聞くと、本当に良いうたですね。ああ、さらば、青春の光...

それでは、また。


2017年3月5日日曜日

テレビ番組の医療情報について

先日放映された健康情報番組が話題になっています。とある睡眠薬(仮にホニャラランとしておきましょう)が糖尿病に有効であることを示唆する内容だったようです。

ホニャラランは睡眠薬としては国内でも適応を得ていて、現在進行形で使用されていますが、糖尿病に効果を示すことを強く示唆する研究は現時点においてはありません。当然、糖尿病に対する適応もありません。

番組放映後、当然のことながら専門家を中心に大きな批判が巻き起こり、番組として謝罪がなされたようです。

このホニャララン、製薬会社がそのような説明をしていないにもかかわらず、なぜか発売当初は「従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン型睡眠薬)と異なり、依存性がない」といった触れ込みが出回っていました。(今なおネット上でそのような書き込みを確認することができます)

しかし、このホニャララン、発売当初からFDA(アメリカ食品医薬品局)が、従来の睡眠薬と同じく、依存性についての懸念を指摘していました。ホニャラランを発売する製薬会社も適正使用ガイドにて、依存リスクについてきちんと触れています。なぜこのような現象が起きたのでしょうか。「従来の睡眠薬とは異なる機序の睡眠薬が発売!」というキャッチフレーズが一人歩きしてしまったのでしょうか。

というわけで、いきなり結論に飛んでしまいますが...
  • テレビ番組で紹介される医学情報は、必ずしも真実とは限りません。
  • 新聞記事も同様です。「毎日○△茶を飲む人は、〜病にかかる人が少ないことがわかりました!」系の記事には特に注意してください。根拠となっている研究は、信頼度の低い観察研究であったり、利害関係のある企業が全面的に研究資金を出していたりすることがあります。また、その後同様の研究で矛盾する結果が出たり、より質の高い研究で否定されていたり、そもそも再検証すらされていなかったりすることの方がむしろ多いのです。
  • ネット上の情報になると、更に信頼度が下がります。こと精神医療に関しては、有害といってもいい情報すら散見されます。
「じゃあどうしたらいいの?」という疑問が当然出てくると思います。私は、そのために専門家がいるのだと考えています。テレビ番組、新聞、ネット上の記事で気になるものを見つけたら、遠慮なさらずご質問ください。知ったかぶりをして曖昧に濁すようなことはしませんし、ましてや怒ったりするようなことは絶対にありません。医療に確実というものはありません。情報の洪水の中から、比較的信頼性の高いものを選び出し、これを皆さんに説明・提供することができたらと考えています。

それでは、また。




2017年2月6日月曜日

With Honors (邦題:きっと忘れない)

With Honors (邦題:きっと忘れない)という映画を紹介します。

あらすじはこんな感じです。
----------------------------------------------------
優等賞(With Honors)でのハーバード卒業を目指す主人公モンティは、ある雪の日に浮浪者サイモンと出会う。誠実である一方頑なで、やや傲慢な面も持ち合わせていたモンティは、サイモンとの交流により、少しずつ変わり始める。
----------------------------------------------------

うーむ。ありがちですね(笑)。しかも私が以前に紹介したこの映画とも粗筋が似ています。私の好みがお分かりいただけたでしょうか(笑)。

主要人物は大学生でモラトリアム感満載ですし、やや青臭さが鼻につく場面も多いのですが、つい何度も見てしまう映画です。劇中の私の好きなセリフを紹介します。ジョー・ペシ演じるサイモンが、ブレンダン・フレイザー演じるモンティに宛てた手紙の文章です。

----------------------------------------------------
You shall no longer take things at second or third hand.
Nor look through the eyes of the dead.
Nor feed on the specters in books.
You shall not look through my eyes either, or take things from me.
You shall listen to all sides and filter them from yourself.

「誰かが言った」なんて言ってくる奴は信用するな
死人の体験を信じるな 
本の中の幽霊の餌食にならないようにしろ
俺の体験や発言を間に受けるな
あらゆる側面に耳を傾け、お前自身のふるいにかけることを心がけろ
----------------------------------------------------

これは、私が心理療法を学び、実践する上で常に大事にしていることとも重なります。私がこれまで教えを請い、そして、惜しみなくその経験と技術を伝授してくださった先生方にも底流しているスピリットであるようにも思います。

この映画をはじめて見たのは、20歳の頃くらいだったでしょうか。私のものの考え方、身の振りよう、そして精神科医としての姿勢を形作るのに、影響を与えた映画の一つなのかもしれないな、と、今あらためて思いました。

マドンナが歌うエンディングテーマも、淡々としている一方で感情的でもあり、非常に私好みです。よろしければ、ご鑑賞くださいね。それでは、また。










2017年1月30日月曜日

パニック障害(パニック症)の治療について

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

さて、当クリニックが開院して、1年と半年ほど経ちました。どのような困りごとの患者さんが多く来院されるか、だいたい開院前の予想通りとなっていますが、ひとつだけ予想と異なることがあります。

それは、来院患者さんにおけるパニック障害(パニック症)の割合が、思っていたより低いということです。パニック障害の方は、特定の身体感覚(動悸、息切れなど)に恐れを抱くため、まずは体の病気を疑って、内科(例えば循環器内科、呼吸器内科)を受診されることがほとんどです。おそらくは、そこでそのまま治療を続けておられるのだろう、と今は考えています。(まずは内科受診、という選択自体は大正解で、むしろ推奨されます。心疾患、甲状腺疾患などをはじめとした身体疾患の可能性を除外することが何より大事です。)

一方で、パニック障害は精神科の病気です。もし、下記の項目に当てはまるようであれば、当院にご相談いただく価値があるかもしれません。
  • 確かにパニック発作はおさまっているが、自宅からほとんど出られなくなった。
  • 抗不安薬(デパス®、コンスタン®、ソラナックス®、メイラックス®、リーゼ®、セルシン®、レキソタン®など)が欠かせない。少しでも薬が切れると途端に不安が襲ってくる。
  • 妊娠を考えているため薬をやめたいのだが...。
  • 認知行動療法(または認知療法)が効果的で、「考え」を変えたら症状が改善するとアドバイスされている。言われた通り、「考え」を変えるように努力はしているのだが...。
  • そろそろ薬をやめたいと思っているが、やめどきがよくわからない。
  • 病気を悪化させると聞いて、コーヒーやお酒をやめた。電車ではヘッドホンを大音量で聞いて気をそらしている。デパートに行く時には必ず家族についてきてもらう。日々の生活が不安を避けるための「おまじない」や「約束事」で埋め尽くされていて、なんだか窮屈である。
当クリニックの売りの一つは、一人の治療者(私のことです)が、薬物療法と心理療法の両面から、総合的に患者さんの状態を判断できることです。これは、パニック障害をはじめとした不安障害の治療においては、とりわけ大きな強みとなるのです。

パニック障害の治療について悩みを抱えておられる方がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡ください。