2015年7月9日木曜日

無から出た錆 熊木杏里

医療機関における初めての診察のことを初診といいます。当クリニックの場合、初診時にはまず、何にお困りなのか、いつからその困りごとが始まったのかなどをお聞きします。そして、その方が今日まで、どのように生活してこられたのかもお話ししていただきます。(もちろん、無理に聞き出したりはしません。話したくないことは話さなくてもかまいません。)

さて、唐突ですが、熊木杏里さんの「無から出た錆」というアルバムがあります。冒頭を飾るのが「長い話」という曲なのですが、曲名とはうらはらに、5分強という短い時間の中で彼女はこれまで生きてきた20数年間を一気に語りきってしまいます。(歌詞のリンクはこちら

不安を抱えつつ訪れたクリニックで、初めて対面した人間に、自分のこれまでを、限られた時間で語り切るのはおそらく無理です。私たちは才能にあふれたシンガーソングライターでも、表現力豊かな詩人でもありませんから。

診察は1回で終わってしまう訳ではありません。あなたが何にお困りなのか、あなたがどういう人間なのか、ゆっくり、焦らずにお話しいただければと思います。