2017年3月5日日曜日

テレビ番組の医療情報について

先日放映された健康情報番組が話題になっています。とある睡眠薬(仮にホニャラランとしておきましょう)が糖尿病に有効であることを示唆する内容だったようです。

ホニャラランは睡眠薬としては国内でも適応を得ていて、現在進行形で使用されていますが、糖尿病に効果を示すことを強く示唆する研究は現時点においてはありません。当然、糖尿病に対する適応もありません。

番組放映後、当然のことながら専門家を中心に大きな批判が巻き起こり、番組として謝罪がなされたようです。

このホニャララン、製薬会社がそのような説明をしていないにもかかわらず、なぜか発売当初は「従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン型睡眠薬)と異なり、依存性がない」といった触れ込みが出回っていました。(今なおネット上でそのような書き込みを確認することができます)

しかし、このホニャララン、発売当初からFDA(アメリカ食品医薬品局)が、従来の睡眠薬と同じく、依存性についての懸念を指摘していました。ホニャラランを発売する製薬会社も適正使用ガイドにて、依存リスクについてきちんと触れています。なぜこのような現象が起きたのでしょうか。「従来の睡眠薬とは異なる機序の睡眠薬が発売!」というキャッチフレーズが一人歩きしてしまったのでしょうか。

というわけで、いきなり結論に飛んでしまいますが...
  • テレビ番組で紹介される医学情報は、必ずしも真実とは限りません。
  • 新聞記事も同様です。「毎日○△茶を飲む人は、〜病にかかる人が少ないことがわかりました!」系の記事には特に注意してください。根拠となっている研究は、信頼度の低い観察研究であったり、利害関係のある企業が全面的に研究資金を出していたりすることがあります。また、その後同様の研究で矛盾する結果が出たり、より質の高い研究で否定されていたり、そもそも再検証すらされていなかったりすることの方がむしろ多いのです。
  • ネット上の情報になると、更に信頼度が下がります。こと精神医療に関しては、有害といってもいい情報すら散見されます。
「じゃあどうしたらいいの?」という疑問が当然出てくると思います。私は、そのために専門家がいるのだと考えています。テレビ番組、新聞、ネット上の記事で気になるものを見つけたら、遠慮なさらずご質問ください。知ったかぶりをして曖昧に濁すようなことはしませんし、ましてや怒ったりするようなことは絶対にありません。医療に確実というものはありません。情報の洪水の中から、比較的信頼性の高いものを選び出し、これを皆さんに説明・提供することができたらと考えています。

それでは、また。